フカフカ毛並みの福丸くんと胸のハートマークが目印の八重ちゃん。2匹の猫をあしらったロゴが目を引くキッチンカー「福八(ふくや)カレー」は、毎週金曜日、さざなみタウンにやってきます。
キッチンカーからは、スパイシーなカレーの香りが広がり、そして、お客さんと楽しく話す店主の声が聞こえます。
今回は、スパイスカレーとその人柄でお客様を笑顔にする「福八カレー」店主、速水義孝さんをご紹介します。
前職は小学校の教員。小学校の教員は、深く子どもたちと関わる仕事です。その成長や変化を間近で見ながら、時には喜び、時には悩み、自分自身も成長させてもらいました。
しかし、「教員の仕事が好き」という気持ちは変わらない一方で、50歳を超えた辺りから、これからの自分の人生を考えるように。
「自分にとっての幸せは何か」「定年後に何が始められるだろう」とモヤモヤと考えるうちに、「今までの仕事とは全く別のこと、ゼロからスタートできることをしたい」と思い始めました。
元々、料理好き。家の畑で栽培したハーブを料理に使うこともしばしば。ハーブ好きが高じて、ハーブコーディネーターの資格も持っています。
料理が好きでハーブの知識も活かせる。ゼロからのスタートに、スパイスカレー屋が候補になるのは必然でした。
ただ、家族には仕事を辞めて、スパイスカレー屋を始めたいとはストレートに言い辛くて。びっくりさせるだろうし、反対されるかもしれない。
だから、少しずつ小出しにして、自分のやりたい事を家庭内に浸透させていきました。その甲斐もあって、今は家族のみんなが応援してくれています。
スパイスカレー屋は、店舗を持つのではなく、当時は長浜では少なかったキッチンカーでの営業にしようと決めて、準備を進めることに。
当初の計画は、定年の2年前に退職して、営業開始というスケジュール。定年後にしなかったのは、定年退職後だと、仕事をやり切ったという思いが強く出てしまい、ゼロからのスタートにブレーキがかかりそうだったから。
しかし、想定外の出来事が起こりました。そう、新型コロナウイルスの感染拡大です。
出歩くことがままならない状況で、開業準備は思うように進まず、大幅に遅れることに。それでも、定年前に仕事を辞めるという思いは守ろうと、定年の1年前に退職しました。
新型コロナウイルスも落ち着きはじめ、キッチンカーの内装や設備を決めたり、必要な備品を揃えたりと準備を進めるなか、妻から勧められて、ながはま・こほく創業塾を受講することに。
創業塾では学ぶこと以上に、受講生同士のつながりが出来たことが有り難かったです。既にキッチンカーで営業している受講生もいて、営業許可の相談など、色々と助けていただきました。
そして、2022年12月16日、福八カレーを開業しました。「福八カレー」の名前は、もちろん2匹の飼い猫が由来です。猫を使ったロゴは可愛いと評判で、猫をきっかけに話が弾むことも多いです。
現在は、毎週金曜日にさざなみタウン前に出店しています。営業準備は、前日の昼からスタートし、当日の朝まで。合計で10時間以上はかかります。
玉ねぎを飴色になるまで1時間以上ゆっくり炒める。野菜スープをコトコトと煮込む。使う野菜は、自分の畑で栽培したものや地元の直売所で購入した地元のものを出来るだけ取り入れています。
こうして出来上がった野菜スープには旨味がたっぷり。20種類以上のスパイスとハーブを合わせれば、食欲をそそる香りが立ち始めます。
スパイスカレーは、シャバシャバとしたカレーが多いですが、福八カレーのスパイスカレーは、家のカレーの延長線にあるようなカレーを目指しました。
家のカレーは子どもも大人も大好き。そんなカレーを極めたものが福八カレーのスパイスカレーです。20種類以上のスパイスとハーブをオリジナル配合しています。
ライスはサフランライス。実は、畑でサフランを栽培していて、時期によっては自家製サフランを使っています。
サフランは、11月に収穫して、めしべを取り、乾燥させます。めしべを取るという作業にとても手間がかかるため、これ以上栽培面積は増やせません。
だから、12月ごろから3ヶ月ほどしか、自家製サフランを使ったサフランライスは提供できなくて残念です。
営業日には、妻と娘が手伝ってくれます。妻は福八カレーの営業日に合わせて仕事を調整してくれていて、一番近くにいる最大の支援者です。
今では、店で提供するマサラチャイ作りも担当。マサラチャイのスパイスを挽く、その楽しげな様子は、見ていてこちらも楽しくなります。
起業すると決めてから、準備期間中、起業後の今まで、ずっとワクワクが続いています。
辛かったことといったら、コロナ禍で思うように準備が進まなかったことぐらい。ワクワクとした期待感の方がずっと大きく、人との出会いを心から楽しんでいます。
福八カレーでの出会いは2つあります。ひとつは教員時代の教え子や保護者の皆さんとの新たな出会いです。教員として多くの子どもたちや保護者の皆さんと関わってきました。
しかし退職したことで区切りになるだろうと思っていたその関係は、開業後、新しい形で繋がっています。
教え子や保護者の皆さんが、私が開業したことを聞いて、わざわざお店に来てくれるのです。遠くは東京や大阪からも。こうやって退職後も違う形で出会い、繋がれるのだと知りました。
もうひとつは、全くの新しい出会いです。インスタグラムなどで知った福八カレーを目指して、来てくれるお客様。
カレーの匂いにつられてお越しになるお客様。今まで知らなかった人たちとの出会いです。カレーを通じて知り合い、その日、その時間に交わすたわいもない会話は、無条件に楽しいものです。
ゼロからのスタートは、大きなチャレンジ。家族にも心配をかけました。でも、一歩踏み出した先にこんなにワクワクした気持ちになれる自分がいるとは。これからもこのワクワクを大切に、福八カレーを続けていきたいです。
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